息子さんを僕に下さい。





 自分の人生に、逆プロポーズと言う言葉はないと思っていた。






「ユーリ、お前をぼくによこせ」
 こんなガサツな口調でも嬉しいには嬉しい。
 だが、
 相手は天使とみまごう程美しくも「男」。
 若く見えても82歳。
 超歳の差カップルだ。成立するはずがない。

「ぼくは本気だぞ。ユーリ、ぼくに貰われろ」
「ええと・・・こんな時どうすればいいのかな?コンラッド」
「どうしようって・・・取り合えず『お前なんかにやれるか!』
 ってちゃぶ台ひっくり返しときます?」

 古き良き父親のあり方を議論してる訳じゃないって。

「そ、そういえば、今回の決定権はグウェンにあるんだったよなっっ。
 どうするよ、お父さん」
「お前の父親になった覚えはない」

 おれもなられた覚えはない。

「ぼくはユーリの婚約者だぞ!?ぼくが貰っていいに決まっている!」
「あのさー、ヴォルフ。そういう我侭な考えはどうかと・・・」
「そうだぞヴォルフラム。今回はそれを決めるために集まってるんだから」
「・・・コンラート・・・さては貴様っっ・・・」

「遠まわしに、渡さないって言ってるんだけど?」

 ・・・ああ、火花バチバチいってるよ。

「コンラートっ貴様ぁっ。そんなことが許されていいと思っているのか!?」
「許されるも何も、陛下は人のものじゃないんだから・・・」
「だから、不埒者の手に渡らぬように、ぼくが貰っておこうと言っているんだ。
ぼくに貰われろ、ユーリ!!」

・・・え?

「そんなこと言っても、もう抱いて寝ちゃったしな・・・」

 えぇっ!?

「コンラート、前々から言おうと思っていたがお前という奴は・・・っ!!」



「・・・あのさぁ」

 目の前で自分を巡る争いが起こっているにも関わらず、
 ユーリは呑気な声で告げた。



「あみぐるみぐらいで熱くなるなよ」



 そう。
 グウェンダルに決定権があるのは『あみぐるみ』。
 抱いて寝ちゃったのも『あみぐるみ』。

 グウェンダル力作の等身大『双黒の魔王人形』の里親探し大会での光景であった。

 ちなみに麗しの王佐、フォンクライスト卿ギュンギュン閣下は
 興奮しすぎの鼻から大量出血でダウン中だ。
 今頃、ギュン汁垂らして悔しがっているに違いない。

「好かれるのは嬉しい。嬉しいんだけれどもっっ」

 あみぐるみくらい、また作ってもらおうぜ?

 ほら。



 白いライオンちゃんとオレンジのうさちゃんが、恨めしそうにこっちを見ている。

















本命はヴォルユなのですよ。

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