VOL3:「ヴォルフラム」




 初めて、「守りたい」と思うものが出来た日を、思い出す。





 母でも兄たち(しゃくだがコンラートも入れておいてやる)でもなく、
 他人で。
 しかも、最初は殺してやろうかとも思った相手だ。


 だが、こんなにも今は愛しくて、
 その者のために、血を流す事もいとわない。
 そんな自分がいる。



「ユーリ」
「あ?何だよ、ヴォルフ」



 心の中で、1・2・3と数えてから、その言葉を口にする。


「もしお前が、どこか遠くへ行こうとも、ぼくだけは付いて行って
 やるから、安心しろ」


「は?何言っちゃってんだよ。だいたい遠くってドコ?」
「・・・遠くといったら・・・その・・・っ」
「だーかーらー、どこ?」
「・・・ったくこのへなちょこ!!そういうときは『おう。ありがとう』ぐらい
 言っておけっ!!」
「おう。ありがとう」


 プーの決意、あっけなく粉砕。


 だが、ここでめげている場合ではないことを、ヴォルフラムは
 知っていた。

 何があっても、たとえ『世界』がユーリを嫌っても、
 ぼくはお前のそばに居て、守るから。




 ―――今、命を賭けて忠誠を誓おう。






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