VOL2:コンラート






 思い出す日はいつも、『赫』に打ち消され――。




「陛下は、"争い"って何だと思います?」
「…はい?」

 俺の唐突な質問に、双黒の魔王は一瞬ためらうように口をつぐんでから。
 闇をこぼしたような双眸で俺に問い返す。

「それは、良いものか悪いものかって事?」
「…違いますよ。陛下の考える"争い"を訊いているんです」
「…だから…っそんな抽象的じゃわかんないって…」

「陛下の感じたままを、そのまま言った下さればいいんですよ」
 そういうと 数秒うつむいて。翳り一つない声でこう返すのだ。


「おれは戦争はとにかく嫌いっ。よくわかんねぇけど…罪もない人を
 苦しめるのは嫌だっ!それで…自分の大切な人を傷つけるのはもっと嫌だっ!!
 だからおれは、戦争なんか絶対にしないっ」

 それに、

「決めたんだよ。日本に生まれたからには平和主義、って」



 確かに俺はあの日、この言葉をくれる人を待っていて、
 赫い中ただひたすらに あやまちを悔いては、乾いた空に愛しさを感じていた。

 平等な命などこの世にはないのだと、自分自身を呪っていたんだ。

「もちろん、コンラッドもだろ?」
 だからこそ、確かな芽づいたものを守りたいと願う。

「はい、ユーリ」




 あの時俺が願ったただ一つのものが、今ここにあるから。






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