「おい犬」 「何ですか、バカ猿」 屋上で、空はいつもより灰色だと思いながら尋ねた。 「オレ達が”わが君”を守る為だけに存在するのなら、オレ達の幸せは永遠にないと思わないか?」 犬はオレを凝視する。 「何を言うかと思えば・・・。”わが君”をお守りすることが我等の存在理由、それが幸せですよ」 何もかもが苦痛だった。 自分も。仲間の思いも。世界も。生きることも。 呼吸をする事さえ。 自分の価値とか、生まれた意味とか。 それらが全て決まっていたオレには、悪あがきの理由も見つからない。 「――そして水をもらえない花は干涸びるか・・・・・・」 今度生まれる時は、アスファルトに咲く花が良い。 もう少しは、強く生きられる術を見出せるかもしれない、と。 頭上を飛ぶ鳥を呪いながら思った。戻る