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「いずみー。家ついたぞー」 「・・・うー」 「・・・あぁ、もうっ勝手に入るからな!お邪魔しまーす」 オレは泉のズボンのポケットから鍵を取り出して、勝手に中に入った。 背負っている泉を落とさないようにドアを開けるのは意外と大変で、しかも奴にはしがみつく力もないものだから、 余計慎重になってしまう。 (こんな体でよく練習に出ようと思ったもんだ) 帰りがけに見た泉はふらついていて、三橋や田島が止めるのも聞かずに歩きだそうとして・・・。 こけた。 『だから言わんこっちゃない』 『浜田、やっぱりこいつ帰らせたほうがよくね?』 『いっ、泉君!!だいじょっぶ!!?』 『はい、三橋は落ち着こうねー』 顔を真っ赤にして、壁によっかかりながら唸っている泉を、オレはどうしても放っておけなかった。 『田島。オレ、コイツつれて帰るからさ、監督に泉は休みですって言っといてくれ』 それで、オレは泉を部屋まで運んできたと言うわけだ。 「38度5分。完璧に風邪だなこりゃ」 しかも誰もいないから、1人で置いていくわけにも行かないし。 「なぁ、お前の家族いつ帰ってくる?」 「・・・8時」 「あと3時間もあるじゃんか・・・。とりあえず冷やすから、お前着替えとけ。台所あっちで良いよな?」 勝手知ったる他人の家というか、何度か泉の家には来たことがあった。 それは、まだオレが先輩と言われていた頃の話だが。 「おーい、泉。氷できたぞー・・・」 寝てるし。 「着替えとけっていったのに・・・おーい起きろー」 揺すっても起きない。完璧に熟睡モードに入ってる。 かといって脱がすわけにも行かないし、とりあえず布団をかけて、氷枕とタオルを額にのっけといた。 「幸せそうな顔して寝やがっって・・・」 こっちは心配で仕方がなかったって言うのに。 「・・・はま・・」 「おう、どうした。腹でも減ったか?」 「・・・野球やりたい・・・・んでしょ?」 「・・・は?」 泉は途切れ途切れだが、そのように口にした。 オレに言ってんのか? 「別に・・・もう体力追いつかないし」 「・・・でも・・・浜田先輩は・・・」 「・・・泉?」 今、『先輩』って言った? 「・・・止めないで下さいよ・・・」 その後は、規則正しい呼吸の音しか聞こえなかった。 そういえば、今目が開いてなかったぞ。 「・・・寝言かよ」 真剣に受け答えしちゃったじゃないか。 『野球やりたいんでしょ?』 どうだろう。肘のせいにしてるだけで、本当はそうかもしれない。 ただ、何かと理由をつけてるだけで。 本当はもう1回お前とやりたいかもしてない。 でも。 ごめんな。まだ本当のことは言えそうにないよ。 「・・・浜田」 「・・・おぉっ!起きたか泉!」 「何びっくりしてんだよ・・・。てか、今何時。」 「6時半かな」 「あー・・・。もう練習始まってんな・・・」 「まだ行く気かよ。今日くらい休めって」 「・・・もったいないじゃん、だって・・・」 「ん?どうした?」 「野球やりたいのに、できない奴だっているだろ」 「・・・」 「何だよ」 「っ何でもない」 「嘘つけよ!顔笑ってんじゃねぇか!・・・ごほっ、ごほっ」 「あー、お前寝てろ。何か腹に入れるか?おかゆくらい作れるぞ」 「うぜー、お前オレの母親かよ」 「うるせー」 なんだ。そういうことか。
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