「潤いが欲しい」と彼は言った。 人に潤いを与えるはずの「姫」である彼が。 「だったらこれからどうする?」 「できればここから消えたい。そして側に居て欲しい、お前に」 「でも、オレでは役不足なんじゃないのか?」 「――ただ、おまえは笑ってくれれば良いよ」 だからオレは、上辺だけの笑みを浮かべて歩いてる。 君と。逆立ちのスパイラル
運命の位置づけは曖昧で、こんなもんかとオレは笑う。 (あぁ、結構簡単なもんなのね) 選択しだいで黒にも白にもなるって事。 だけど、どちらにもなれない自分は卑怯だと思う。 たった一人を守る為に、オレは灰色になろうと黒になろう。 それは自分を守ることでもあるから。 自己暗示は、結局自分の為。消えたミルキーウェイ
「星は闇だと思う。あれはどんなに白くても闇なんだ」 「何で?」 「神々しかろうが、あれはオレ達を助けてくれやしない」 亨は俯いて、ただ一言呟いた。 「ごめんな」とオレに謝った。 そんなもの欲しくなんてないのに。 頼むから、すぐにオレの前から消えてくれ。また救われたいと思ってしまうから。 希望の贋作。戻る