Endless  life―前―





「陛下ぁぁーっ!出てきて下さいましっ、陛下はわたくしのコトが
 お嫌いなのですかぁぁ?!」




『眞魔国一の超絶美形』もとい『眞魔国一の汁気の多い男』
 フォンクライスト卿ギュンギュンは、髪をふり乱しながら、魔王陛下の捜索中だった。
 というのも、ちょっと目を離した隙に有利が煙の如く姿を消してしまったからである。
 机に残された書類の束をみて唖然としながら、ギュンターは途方に暮れてしまった。
 机の下に隠れているのでは?と探し、窓の下を探し、
 ついでに机の中をかき回してみたがどこにも 姿が見当たらない。
(もちろん、あちらの世界の秘術で親指サイズの"ミニマムユーリ"に
 なった可能性も捨て切れなかったが)
 まぁ何ておちゃめな陛下(はあと)と信じて疑わぬ王佐殿は
 陛下のリリット・ラッチー・ナナタ(省略)・ダカスコスに
 告げられる前までその事実を知らなかった。
 


「陛下なら"コンラート閣下と仲良さげにお散歩"してらっしゃいましたよ?」






 血盟城に、叫びが轟いた。






「ぬわぁぁんですってぇぇっ!!」
「・・・っぐっ・・・閣下っ・・・くるし・・・っぐえっ」
 首を絞められ、脳みそを揺さぶられたダカスコスはそのまま白目をむいて倒れた。
 ギュンターはそんなコト気にせず、ダカスコスを放り投げて城を走り回る。

「陛下ああぁあぁぁぁっ!!!」

 自分には、陛下をお守りする義務がある。何人たりとも渡してはならない。
 コンラートはルッテンベルクの獅子とも呼ばれた男だ。
 実はあの甘いマスクの下に、獣並みの性欲をひたかくして
 いるのだろうと前から思っていたが・・・。
 まさか、まさか・・・っ。もう陛下はあの男の毒牙にかかって・・・っ!


「陛下はい゛ね゛ーがーっ 陛下はい゛ね゛ーがーっ!」
 さながらナマハゲのような形相で各部屋をあさりまくる。
 住人達はさぞかし驚いたことだろう。
 あの麗しい王佐ギュンター殿が各部屋をバタンバタン開けていく。
 見られたくないあんなトコやこんなトコまで大公開。
 しかもツェリ様のセクシィ〜ショットならまだしも
 ヴォルフのぐぐぴーな寝言とかグリ江ちゃんの女装途中とか。

 中でも酷かったのはグウェンとアニシナの愛(?)の秘密実験だった。
「やめろアニシナっ。離せと言っているではないかっ!!」
「もにたぁを離せと言われて離す毒女がいるものですかっ!
 捕獲完了!さぁ、グウェンダル。あなたの魔力を存分に提供しなさいっ!!」
「ひでぶーーっ」
 はて、アニシナは"北斗神拳"の使い手だっただろうか?
「今回は改良に改良を重ねた自信作!名付けてっ、"ゆうう2(ツー)"!!」
「何だそれはっ。ああ、気分がどんどん不快に・・・っ」
「説明しましょう!こちらにあります"ゆうう2"は
 黒いボディの右側にある手回しハンドルを回すことにより中にある
"けんばん"とやらから、世にも不快な不協和音を流して
 狙った相手を確実に不快にさせるという優れものです!!」
「何っ!?」
 それならむしろ"フカチュー"。
「そう、相手を外傷によって傷つける時代は終わりました。
 これからはっ、相手の精神を破壊することによって相手に
 復讐しよう!という力の無い女性にとっては頼ってもない相手もアイテム
 こそ必要なのです!!
 フラれた男への仕返し、ご近所の騒音対策としてもご利用いただけます・・・しかし」
 赤い悪魔は腕を組みつつ、長身の幼馴染を呆れるように見返した。
「けんばんを入れるためとはいえ、少し大きずぎるサイズのようですね。
 しかも、手回ししている相手まで不快になってしまっては元も子もありません。・・・したがって」
「・・・失敗作なのだな?」
「よくわかりましたね」
 何ともまあ冷徹無比なこと。
 これからは魔力も節約の時代だというのに。


 ごめんなさい、毒女からは 救えない。        BYギュンター


 ギュンターはグウェンダルのもだえ苦しむ様を一句詠みながら
 見守ってドアを閉めた。ギュンターの脳内は100%でそれどころじゃない。
 


 はぁ、愛しの陛下。どこにいらっしゃるのですかー?





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